「重賞を勝って父の存在証明をします。」

 「実家が牧場なので、子供の頃からダービーはあこがれのレースでした。」
キャッスルトップの担当厩務員、城市幸太さん。父・城市公氏の生産、馬主の馬を渋谷信博厩舎で厩務員として担当しています。 「キャッスルトップと言う名前は母が付けました。ジーガートップランの最後の子供に“最上の”と言う意味を込めています。」

 両親が身一つで北海道に渡り、苦労を重ねて開業した城市牧場。息子として生まれた城市さんは、以前別のインタビューで 「両親がやってきたことを結果で示して、親の存在証明をします。」と仰っていました。大きなケガで数年間競馬から離れたこともあったそうですが、 また船橋競馬場に戻り、1からのスタート。つかみ取ったJDDのタイトルは、城市牧場にとって、親子にとっても初めての重賞でした。

 「JDDを勝った翌日、他の厩舎の人に『思うようにならない時期もあるけど、俺も頑張ろうと思った』と言われたのが嬉しかったです。 父にも初めて褒めてもらいました。『JDDはお前の技術のおかげで勝てた』と言われた時、親孝行できたのかなと思えて、初めて泣きました。」 城市さんにもお尋ねしました。“なぜJDDを勝つことができたのでしょうか”「キャッスルトップの調子が良かったこと。強い馬だということを、 俺と光馬と調教師、市川さん(日刊競馬の市川トラックマン。JDDでキャッスルトップを本命)はわかっていましたから。 それから…出走表を見て『こうなれば勝てる』と思っていたことが、まるで漫画のようにすべてかみ合って実現されたからだと思います。」




写真:城市 幸太厩務員






続く物語、日々重ねる歩み

2022年ジャパンダートダービーの登録馬に、船橋・渋谷厩舎のキャッスルブレイヴの名前がありました。 この取材の日、城市さんは「1年経ってまた、小さい牧場から、今度は東京ダービーに出ることができた。 普通、20戦もしてダービーに出るなんてないじゃないですか。馬を鍛えて学ばせる、こういうやり方もあるんだということを見せたい。 自分の担当馬は故障が少ない、これは強みになります。」

7月に入り、キャッスルブレイヴは補欠から繰り上がりで出走が確定、14番人気で挑んだJDDは8着でした。 キャッスルトップからキャッスルブレイヴ、そして今年の2歳。「チーム・キャッスル」の今年から来年への挑戦はもう始まっています。

今回私が感じた「船橋の強さの理由」。
それぞれが馬と人の幾重にも重なる縁を受け継ぎ、引き寄せ、育む力、 そして思いを形にする力を持っていること。そして、そこが「船橋競馬である」と言うことでした。船橋競馬場で日々重ねる歩みが、 今この瞬間も「Fの系譜」として刻まれ続けています。






写真:2021年ジャパンダートダービー(JpnⅠ) 口取り写真









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Writer

フリーアナウンサー 原山 実子

競馬関係、通販番組などでお仕事をさせていただいている、フリーのアナウンサーです。最近まで、リリアン原山でした。