Fの系譜 特別編
レポーター・細江純子
文・阿部典子
※2023年1月15日に実施しました。
細江:今回は、Fの系譜・特別編『2023FUNABASHIジョッキー座談会』ということで、騎手会会長の川島正太郎騎手、騎手会副会長の森泰斗騎手と笠野雄大騎手、さらに本田正重騎手と本橋孝太騎手にお越しいただきました。よろしくお願いします!
一同:よろしくお願いいたします。
細江:私、前から思っているんですけど、船橋のジョッキーは仲良しで、非常にまとまっている印象。「チーム船橋」は意識されていますか?
森:船橋の騎手同士、仲がいいですね。
本橋:チーム船橋。意識はしますね。
本田:みんなフレンドリーですよ。
笠野:うんうん。
川島:仲良いよね。
森:特に派閥も無いし。
本田:みんな森一派っすね。
一同:(笑)
細江:森一派!!ボスですね!!
森:これはね、代々なんですけど、みんな大酒飲み。なんて言うのかな、良い意味の。先輩ジョッキーも飲みニケーションが上手な方が多いですね。
細江:先輩ジョッキーの話題が出たところで、それでは早速始めてまいります。この座談会ではもっと船橋ケイバが強くなるためにはどうすればいいのかをテーマに沿ってジョッキーの皆さんに語っていただければ。最初のお題はまさに“偉大なる先輩ジョッキー”!なんです。皆さんが思う偉大なる先輩ジョッキーというと?
一同:「石崎(隆之)さん」「張田さん」「佐藤隆さん」「桑島さん」「いっぱいいるね。」
細江:一緒に飲んで、みんなが心を許せてしゃべれて、みたいな。
森:そうですね。石崎さんや張田さんは調整ルーム内の娯楽室に僕たちのごはんを差し入れしてくれて。
細江:え?どういうこと!?
本橋:奥さんが差し入れしてくれて。
細江:え!そうなんですね!どんなお料理を?
森:手料理ですね。その時々ですけど。おいしかったー!
本橋:うん、おいしかった!
細江:開催5日間の中で毎日ではないんでしょう?
一同:毎日です
細江:すごい!じゃあレースの後に奥様からのお料理を食べて、そこでレースの話をしたりして学んだこともあるという。
森:そうですね。でも、最初の一時間くらいですね。お酒が進んでくると盛り上がっちゃう(笑)
一同:(笑)
細江:偉大な先輩にはなかなか聞けないことも、お酒が入ると聞けるみたいな感じですか?
森:そんなに壁を作る方々でもなかったので、距離が近いところで話をさせてもらって、僕らが吸収してきたという面もありますね。
細江:では個人的に偉大な先輩というと?
森:何人もいらっしゃるんですけど、僕は張田(張田京調教師)さんにすごくかわいがっていただいていましたね。ご飯をご馳走になったり。馬乗りの面では、張田さんは感覚派なので、教えようとしておっしゃっていた言葉も感覚的な言葉。その中で僕なりに吸収して、教えてもらったという感じがします。
細江:石崎さんに関してはどうですか?
森:ほんとにもうナンバーワンジョッキー。寡黙なイメージでした。
細江:リーディングであり続けるということで、森さんも同じ道を歩んでいますよね。
森:そうですね。石崎さんが辞める間際に、リーディングであり続けることと、そこから退いていく時の気持ちを・・・降りて行く時って辛いじゃないですか。その気持ちの持って行き方など聞かせていただきました。
細江:実際に聞いたんですね。
森:はい。その時はたくさん話してくださって、それはすごく印象に残っているし、山の降り方っていうんですかね。すごく勉強になりました。
細江:その立場だからこその会話、素敵です。
森:具体的にというと、ちょっと上手く言えないんですけど、先頭に立っているからこその孤独。1回だけですが、1時間位いろんな話をしてくださって。自分の心の中にずっと残っていますね。
細江:それを聞いて、皆さんいかがですか。
本橋:僕はそういう真面目な話は、石崎さんとはしたことがないですね。駿さんが可愛がってくれていますね。
本田:そうっすね。
細江:あ、息子さん。
本橋:はい。馬乗りの話をするといったら、俺らは駿さん。
細江:お父さんを見て来た駿君から、ということなんですね。笠野さんはどうですか?
笠野:そうですね、石崎さんにはたくさんご飯食べさせてもらって。だけど、あんまり教えてくれないんですよね。
細江:へええ。
笠野:聞いても、『かっこよく乗れ』としか言わないんで。でも、乗りミスって負けちゃった日に、たまに教えてくれたりするんです。その時、教えてくれたなと嬉しい感覚がありました。僕も駿さんにはだいぶ教わりました。
川島:石崎さんがよく言ってたのは『手綱が長い』。
一同:うん
笠野:あと、勝とうとするから負けるんだと、よく言っていました。
細江:川島さんはいかがですか?
川島:石崎さんは父(川島正行氏)が調教師をしていた時の主戦ジョッキーで、石崎さんが勝ちまくっていたのをテレビで見て、その姿に憧れてジョッキーになりたいという気持ちも芽生えました。あとは佐藤裕太(現調教師)さん。ずっとそばで見ていて、調教に対する姿勢などいろいろ学びました。
細江:石崎さんは、調教でも自分のお手馬は乗るという方だったと伺いましたが。
川島:はい。運動から乗っていましたね。
細江:運動から!?
本橋:馬場の中で運動してた。
森:これはって思った馬は、毎朝。
細江:競馬開催日も関係なく?
森:そうですね。
細江:そういう姿をご覧になってきたのですね。本橋さんの偉大な先輩というと。
本橋:僕はやはり佐藤隆さん。矢野厩舎の主戦で乗っていて。僕(のデビュー)と入れ替わりで事故してしまって一緒に乗ることはできなかったんですけど。競馬学校時代にずーっと見ていたんですが、レースが芸術的で、僕もこんなレースをしたいなって思っていました。
細江:矢野先生に関してはどうですか、学んだことだったりとか。
本橋:矢野先生から学んだこと。うーん、むちゃくちゃありすぎるな。一言では言えないですね。ただ、矢野先生じゃなかったら、僕は今いないです。
細江:本田さんはどうですか。
本田:憧れてるのは石崎さんみたいな乗り方ですね。
細江:石崎さんの乗り方とは、と聞かれたら?
一同:「ロスがない」「慌てない」
本田:そう、絶対慌てない。
森:図ったように差し切る。
細江:本当は焦っちゃいそうなところでもじっと我慢できる。
本田:オレ、できないっすね。
細江:過去にそういうレースをたくさん見て来たと思うんですが、ひとつピックアップしたら石崎さんのこのレースは神業に近かった、というのはありますか?
本田:下のクラスで結構あるんですよね。
森:僕が挙げるならアブクマポーロの川崎記念。あれは凄いなって、今でもYoutubeで動画見て勉強しますね。全く慌てない、あのGI級のレースで自然体。全部計算され尽くしているんだろうなっていう。すごいですね。あと、乗る馬を強く見せてるっていうのはありますね。
本田:強そうな馬の勝ち方をしますよね。
ライター・フォトグラファー 阿部典子
2006年から船橋競馬場での取材をスタート。厩舎公式サイトをはじめ、コラムや写真で船橋競馬場の魅力を発信中。カメラ片手にレースや厩舎風景など様々な表情を撮り続けて船橋競馬場歴16年。満を持してお届けします!