Fの系譜 特別編
レポーター・細江純子
文・阿部典子
※2023年1月15日に実施しました。
細江:過去のお話を伺ったところで、次は現在のご自身についてお伺いしましょうか。
森:現在の自分・・・トップで戦い続けてすごく苦しいなって思っていますね。友達から、お前はいいなって言われるんですけど、いやいや、その分大変な思いをしてるしって。休みが無い南関のスケジュールでずっとやっているし。駆け上がってる時はめちゃくちゃ楽しかったですけどね。調子にも乗ってたんですけど。
細江:その調子に乗っている時の話も聞きたいです。
本田:その頃、これからリーディング獲るぞっていう気持ちが僕らも分かってたし、レースを後ろから見ていても『うめぇな、競馬』って。ある日のレースで、船橋で泰斗さんが前の前くらいで、動いたんだよね。
本橋:ぐりぐり本命めがけて迷いも無く行ったんです。その時、本田騎手と道中で並んでたんですけど。
細江:どこでも2人、仲良いのねぇ(笑)
本田:それで勝ったから。やっぱり、うめぇなぁって話してたんです。
本橋:すごい動きでした!あれ負かすぞーって。感動したもん、俺!
細江:考えられない感じだった?その動きが?
本橋:迷いなく行った感じだったので。
森:10年弱くらい前ですね。その時の気持ちをずっと維持できたら最強だと思ってますけど。
細江:なかなか難しいですかね。
森:薄れさせないようにと頑張っているんですけど難しくて。僕も42歳になって、気持ちの作り方やフィジカル的なものの維持ですごく悩んでいるタイミングですね。これからは関係者や家族、いつも変わらずにそばにいてくれた人たちを大事にしながら騎手人生を送っていきたいと思っています。
細江:素敵ですね。笠野さんはいかがですか。
笠野:昔と変わらずに今も調教では20頭くらい乗っています。今日も午前2時から乗りました。前より競馬に乗せていただけるようになって、そういう方たちの馬で少しでも良い結果を残して行くことが恩返しになるのかなと思っていますね。
細江:うんうん。正太郎さんは?
川島:そうですね。今、騎手会の会長をやらせてもらっているけど・・・自分が会長になるとは思っていなかった。
細江:これは周りが正太郎しかいないってなったんですか?
本田・本橋:そうです。
細江:信頼されてる!
川島:そうやって、みんなから信頼を受けて会長職につかせてもらっているので、船橋のジョッキーみんながより良くなるよう動いていきたいですね。ジョッキーという立場では、2年くらい前からトレーニングしていて、以前より思うような騎乗ができてきた感触があります。だからもうちょっと頑張りたい気持ちが芽生えて来ました。
本橋:僕は、昔に比べたら自分でも大人になったなぁと思いますね(笑)
一同:(笑)
細江:レースでの我慢という意味では私すごいファンなんです!
本橋:えっ、ほんとですか!ありがとうございます。みんなや馬と仲良くしていきたいなって思います。
細江:自分が船橋所属になっていることについては?
本橋:船橋で良かったなと思う(一同頷く)。他の場がいやだってわけじゃないですけど、馬や騎手のレベルが、僕がデビューした時は物凄かった。それを間近で見られたのは、船橋で良かったなぁと思います。
細江:なるほど。本田さんにとって現在の自分は?
本田:泰斗さんがずっとリーディングで、その後が結構間が空くんですよね。その間に翼(笹川騎手)、矢野(貴之騎手)さんとかがいる。もう一個上のステージに行くにはどうしたらいいのかなって試行錯誤中です。
森:大井は開催日数も船橋に比べて断然多いから、相対的に有利というか。もちろん上手いジョッキーはいっぱいいるんですけど。船橋が分が悪い面というのは否めないというか。
細江:そのあたりは自分でできることと、そうじゃないことがありますよね。
本田:そうですね、どうすればいいのかなって感じですね。リーディングを獲りたいという気持ちはそんなにないんですけど、その“結構開いている間”、その差をどうやったら埋められるのかなっていうのは考えています。
細江:なるほどね。では新人や若手ジョッキーについて伺いましょうか。まず知りたいのは、他の場の若手が目に余る行為をした時、同じ場なら声を掛けるけど他場の場合はどう?その競馬場の上の騎手にちょっとあの子どうって聞いたり?
森:その方が多いですね。その場の上の人に、“ちょっと大丈夫?”って。
細江:(笑)
本田:教育、教育!
森:教育だね。俺は割と言っちゃうかな。
笠野:でも、レース中のことはみんな均等に言ってる。危ないところとか。私生活の方はその場の上の方に言っていただく方がいいと思いますが。
細江:じゃあ、教えてもらっていい?各競馬場の風紀委員は?
本田:大井は、ジョージ(和田騎手)・・・さん
川島:川崎はマッチ(町田騎手)。それか今野さんに言うかなぁ。
細江:なるほど。浦和は?
森:岡田大さん、秋元さんかな。
細江:今、ジョッキーになりたいって子がそんなに多くないでしょう。どうしたらいいのかなって思うことはありますか?
森:ジョッキーだけじゃなくこの業界が人手不足ですよね。僕らはJRAと比べるとメディアに出る機会も少ない。定型文みたいになっちゃうけど、良いレースを見せるしかないと思っていますね。僕が昔から考えていることですが、トークショーなど、声をかけてもらったら絶対断らないで行こうと。
細江:ではどうですか。お2人(本田・本橋騎手)は。
本田:すみません、考えたことないです(笑)。でも、昔に比べたら若手ジョッキーはよその競馬場の馬によく乗ってるなというイメージはあります。
森:以前はそんなに乗れなかったもんな。
本田:大井に行くことなんてめったになかった。
森:時代といえば時代で。
笠野:若手には良い環境だなと。
細江:じゃあ、若手の性格というのはどうでしょう。
森:昔よりね、まともですよ。
細江:(笑)自分たちと比べたら?
森:結構ちゃんとしてない?
本田:してますね。でもなんか、あんまり会話しない。
森:そうだね。どっちかっていうと部屋にこもってるのが多いみたい。
本田:ちょっと生意気なくらいの方が可愛げがありますけどね。
ライター・フォトグラファー 阿部典子
2006年から船橋競馬場での取材をスタート。厩舎公式サイトをはじめ、コラムや写真で船橋競馬場の魅力を発信中。カメラ片手にレースや厩舎風景など様々な表情を撮り続けて船橋競馬場歴16年。満を持してお届けします!