及川:さて、ミツオーは秋まで休養して3戦を消化。そして再び東京大賞典へ。アッパレでした。
正一師:ヒロ君(内田博幸騎手)の好判断でハナを奪うと、そのまま逃げ切ってくれました。
史上初の東京大賞典連覇ですよ。親父のはしゃぎっぷりが分かるでしょう(笑)
及川:帝王賞までの数日間は今振り返ると、何かいつもと違う雰囲気。モノレールを降りて大井の競馬場に向かって歩いていると、私の横を見ず知らずの青年がアジュディミツオーの名を連呼しながら通り過ぎて行ったり、私自身の頭の中ではアジュディミツオー逃げ切りのシーンが何度も浮かんだりしました。
そして、その実際のレースでは、カネヒキリとの完全な一騎打ち。実況した私も本当に力が入りました。今だから
言えるんですが、本心では冒頭で紹介した「勝ちたい内田、負けられない武豊」の後に「内田、ミツオー、負けるな!勝てー!」と発したい気持ちだったんですよ。
正一師:そうだったんですね。カネヒキリには、その前の3戦でいずれも先着を許していたので、「地方競馬で行われるホームコースでは絶対に勝つ」の意気込みだった筈です、親父も。果たして、堂々逃げ切って南関東の古馬GI完全制覇達成。親父は“やった、やった”とガッツポーズ、大喜びでした。
元実況アナウンサー 及川サトル
1959年岩手県出身。
大学卒業後の1983年、姫路競馬場で実況デビュー。
1989年東京に進出、2010年3月まで大井をはじめ各地の競馬場で幾多のレースを独特のアジのある実況で盛り上げた。トキメキを声に乗せて、がモットー。