2022.07.15

船橋ジョッキーズレポート
vol.2

スペシャルコンテンツ

Q.他場への武者修行

細江
そんな柿本騎手ですけどジョッキーになってから佐賀と高知に行かれましたよね。
それはどういう流れだったんですか?
柿本騎手
高知の時は、今は乗り役さん(騎手)がいっぱいいるし、売り上げも良いですけど、当時は赤字が出たら即廃止って位、厳しい状況だったんですよ。
乗り役さんは勿論いるんですけど、人数が少なくて。
だから、いっぱい乗れるならということで行きました。仕事はきつかったですけどね。
僕がデビューした時、すでに遠征している先輩もいましたし、その前にも船橋の先輩方も結構高知へ修行に行っていて、その流れで親も後押ししてくれたので行くことにしました。
細江
新しい環境だと人間関係とかもあるわけじゃないですか、その辺りはいかがでした?
柿本騎手
四国自体が初めてだったのもありますし、あと方言とかもありましたから大変でした。
臼井騎手
聞き取れなかったって話?(笑)
柿本騎手
方言とか全く分からなくて。えっ?みたいになることがあるんですよ。
あとは人間関係とかもありますよね。大変でしたね。
細江
どれくらい行かれてたんですか?
柿本騎手
高知は7ヶ月で佐賀は5ヶ月位だった気がします。
細江
騎乗機会を求めてということでしたけど貴重な経験されましたね。
さて、臼井騎手は早い時期にオーストラリアへ武者修行に行かれてましたけど、2017年のヤングジョッキーズシリーズで優勝してすぐ行きましたよね?
臼井騎手
デビュー4年目ですね。3年目の時に優勝したんですけど、まだ南関東の減量規定が3年の時でヤングジョッキーズシリーズに出られるのが南関東だけ3年だったんです(中央の騎手は5年)。ラストイヤーで優勝して減量がなくなるけど、たまたま優勝できたと思っていたんですよ。
細江
馬に恵まれたって仰ってましたね。
臼井騎手
そうなんですよ。競馬学校のときから僕もずーっと落ちこぼれで、散々教官たちにどやされながら、なんとか卒業できたレベルだったんです。
両親の知り合いの知り合いが函館(一昭)先生で、紹介してもらって南関東に来たのはいいものの、ジョッキーは多いし、みんな上手いし、やっぱりコツコツ調教していくしかないだろうと思って。
そんな生活が続いて3年目でたまたまヤングジョッキーで勝つことができたわけです。
それでも僕自身は技術に自信がなかったですね。
細江
周りから見て臼井騎手の技術はどうでしたか?
仲野騎手
技術はそんなに無いですね(笑)
臼井騎手
ありますよ!優勝してますから!日本一です!この際だから言ってやる(笑)
仲野騎手
ちゃんと観に行きましたよ、中山に。そのあと祝勝会一緒にしたもんな。
細江
優しい~!
臼井騎手
でも本当に自信がなくて、自分で理解して勝ったレースがあまりなくて。
ヤングジョッキーの時も自分のイメージ通りで勝てたわけではなかったんですよね。
特に最終戦は、たまたま良い馬に乗れて、たまたま空いた所を突いたら4着に入れたという感じだったんです。
このままだど今の技術では南関東で戦えないなと思って、別の切り口で何かしないと思って武者修行を決めたんです。こういう性格ですし、喋れますし。
細江
英語が?
臼井騎手
喋れます!(笑)
そもそも25歳までは自分に投資したいと思っていたんですよ。
稼いだお金は技術や経験、もしくは英語とか。競馬に限らず色々勉強したいと思っていた矢先にヤングジョッキーで優勝したから、これでどこかに行こうと思っていたんです。
細江
なるほど、良いことだと思います。
臼井騎手
技術がなかったからその他の分野の切り口で何かを得ないといけないと思っていました。
国内も考えたんですけど、みんなと同じ所に行って同じことしてもだめだと思って。
細江
環境を変えたわけですね。
臼井騎手
環境を思い切って変える意味もありましたし、そもそも海外に行きたかったんです。
もともと競馬が好きだから海外に一度は仕事で行ってみたいという思いがあって。
細江
期間はどのくらい行かれてたの?
臼井騎手
1年です。
細江
1年の中で自分が体得したものって何かありますか?
臼井騎手
1年ではなかなか技術は、20年30年やってる方には勝てないですけど、価値観や競馬に向かう姿勢みたいなものは得られました。
現地の人は良い意味でナチュラルで、レースのことなんか考えてないのかなって思うくらい(笑)
中にはレースの後のことしか考えていない人もいましたよ。
そういう意味では、ガチガチに考え込まなくても、競馬に乗る期間や瞬間だけ集中することがあってもいいのかなって。
細江
1年の武者修行から帰ってきた臼井騎手ですが、先輩方からみて変わったところ、成長したなって感じたところはありますか?
臼井騎手
すべてでしょ?スキルアップしたでしょ?(笑)
仲野騎手
さらにうるさくなりました(笑)
競馬だけの括りではなくて私生活での考え方は軽くはなってきてますよね、良い意味で。
多くの騎手が“何年目までにこの数字は残さないといけない“みたいな縛りと戦っていると思うんですけど、良い意味で気楽に乗っているかもしれませんね。
細江
わかる。私も年間3勝ジョッキーだったので、「このまま続けていていいんだろうか」とか、「生活していけるんだろうか」とか考える毎日でした。
ジョッキーは依頼がなければ、どんなに頑張っていても乗れないわけで、人から見たら頑張ってないみたいに思われちゃったりすることもあるわけじゃないですか。
柿本騎手はそのあたりどうですか?
柿本騎手
世間がどう見てるとかは、僕はあまり考えてないですね。
自分がどうしたいか、しか考えてないですね。
細江
強いね。
柿本騎手
騎手免許を取るために自分自身が頑張ってきたわけで、世間がなんて言おうとこれは自分の免許なわけですから。
どんな成績であれ、免許を返したくないのに周りの言葉に影響を受けて返してしまったら後悔すると思うんです。
細江
ブレないですね、素敵です。
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